きらめき企業

イギリスの希少豚を飼育・加工する
独自の牧場戦略

東洋大学経営学部教授
山本 聡 氏

有限会社ふくどめ小牧場は1980(昭和55)年創業、鹿児島県鹿屋市の風光明媚な山中で、「まっすぐ、丁寧に、手間ひまをかけて」をモットーにした牧場・工房・直売店を営み、6次産業のモデルケースとしても名高い。

鹿児島県は黒豚産地として知られるが、ふくどめ小牧場はイギリス原産の希少種であるサドルバック種や、サドルバック種と白豚を掛けあわせたオリジナルの幸福豚の生産・加工・販売の一貫体制を構築。そこには、創業者・福留公明氏の次男で、加工責任者である福留洋一氏の海外経験を基にした経営戦略が色濃く反映する。

「父や兄が育てた豚を余すところなく加工して販売したい」と考えていた洋一氏。高校卒業後、日本の食肉学校などを経て、南ドイツの農場兼工房で学び、2009年には肉加工のマイスターを取得した。そして出合ったサドルバック種の飼育を決意する。

この希少種を丹精込めて育て、ドイツ仕込みの技術で加工することにより、ハムやソーセージにおいしさだけでなく、ふくどめ小牧場ならではのストーリー性を付与でき、他にはない付加価値が生まれると考えたのだ。この小規模牧場の「差別化戦略」は口コミで評判を呼び、関東や関西の著名レストランや百貨店が顧客に名を連ねるまでになっている。

2023年9月25日

有限会社ふくどめ小牧場

鹿児島県鹿屋市獅子目町81-1
【有限会社ふくどめ小牧場 HP】

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山本聡

1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所、東京経済大学経営学部専任講師・准教授を経て2019年4月から東洋大学経営学部教授 (担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。

山本聡