時代の変化に柔軟に対応する力
山本 聡 氏
東京都小金井市の住宅街の一角に社屋を構える株式会社ムラコシ精工。1918(大正7)年創業で、今年100周年を迎えた。自動車の保安部品や耐震用ラッチ(扉の止め具)といった住宅家具金具の分野で高い国際競争力を有する。
3代目の社長で、現在会長を務める村越政雄氏は自社の歴史を振り返り、「これまで倒産の危機が5、6回はあった」と語る。しかし、経営者の企業家的行動から乗り越え、成長を遂げてきた。実際、創業以来、民生ネジ、軍用ネジ、ミシン部品、自動車部品、住インテリアと時代の変化に対応し、新市場を開拓している。
村越氏が自動車部品業界への参入を企図した際は、小ロット生産のブレーキ部品であるブリーダースクリューに着目。業界の系列関係を乗り越え、複数の自動車企業からの受注獲得を可能にした。また、住インテリア業界参入の際は、2代目社長が過去に考案した「鬼目ナット」という木工用ナットに着目し、流通コストの高騰といった住インテリア業界の環境変化に活路を見いだしている。
現在では、過去の地震を再現する3次元加振試験機などの高度な実験設備を用いた耐震金具の開発や国立大学との産学連携から、研究開発型企業としての色彩を濃くしている。多摩地域を代表するものづくり企業といえよう。
2018年5月7日
株式会社ムラコシ精工 :
東京都小金井市緑町5-6-35(住インテリア事業部)
東京都小金井市緑町5-3-30(ファインコンポーネンツ事業部)
【株式会社ムラコシ精工 HP】
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1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所を経て、2012年東京経済大学経営学部専任講師として着任、2015年准教授(担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。
【山本聡の研究室】