時代を読む

日銀の利上げへの道筋

大阪経済法科大学
経済学部教授
米山秀隆 氏

日経平均株価が史上最高値を更新する株高が続いている。その背景には、日本経済がインフレ基調となり、賃上げも見込まれるなど、好調を維持していることがある。金融政策面では、マイナス金利政策解除がこの春にも予想される一方、日銀が解除後も緩和的状況を維持するとの情報発信を行っていることが挙げられる。通常、引き締めは株安を招くが、先行きに金利が大きく上がることはないとの安心感を与えている。

日銀はこれまで物価上昇が2%を安定的に超える状況になるまで緩和を継続すると約束し、それを実行してきた。中央銀行が一般に直面する課題として、事前の約束にもかかわらず、実際に物価が上がると過熱を懸念し、早期利上げの誘惑にかられるという点がある。仮に約束を破って早期利上げに踏み切る場合、中央銀行は約束しても破る、信頼できないと言われることになる。

消費者物価は2022年4月以降、2%を超えて上昇してきたが、日銀は事前の約束を守れるタイミングでの政策転換を模索してきた。この間、アメリカの利上げによる日米金利差拡大から、過度の円安進展を招いた。一方、日銀が先行きの利上げに慎重なことは、利払い負担急増を避けられる点で債務者にも都合が良い。

日銀は、日本経済へのダメージを極力少なくするとともに、自らへの信頼も維持できる政策運営に、先行きも注力していく必要がある。

2024年3月18日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などを経て2020年9月から現職。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏