日本の問題

国産ワクチンの必要性

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

新型コロナウイルスのワクチン開発で、日本は先駆していたアメリカ・イギリス・ロシア・中国に加え、ベトナムやインドにも後れを取っている。

その理由として、それらの諸国に比べ、新型コロナウイルスの感染爆発が起きていない日本ではワクチンの必要性に乏しいという見方が一部にあった。加えて、かつて発生した予防接種をめぐる医療訴訟で東京高裁が国に賠償責任を命じた判決を下したことも積極的な開発をためらわせる遠因になったとされる。

だが、日本でも新型コロナウイルスの感染は長期化し、新規感染者数の増加傾向は止まっていない。その結果、アメリカ製薬大手ファイザーのトップに菅首相がかけ合い、ワクチン確保を求めることにもなったが、輸入ワクチンに依存するだけでは感染長期化や感染源の多様化・複雑化に対応できない。自前ワクチン開発の必要性は日々高まっている。

2020年代前半、世界のワクチン市場の成長率は年率7%近いと推定されている。この水準が10年続けば、市場はほぼ倍になる勘定だ、多額の開発費が負担になる国産メーカーにもビジネスチャンスは大いにある。

副作用を恐れるあまり日本政府は開発規制を続け、緩和や支援・認可に消極的だとされるが、規制するばかりでは新規感染拡大にストップをかけられない。政府は製薬会社のワクチン開発を支援し、国産ワクチンの提供を急がせる義務がある。

2021年5月31日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏