アメリカの失業と日本の休業
東洋大学国際学部教授・慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏
竹中 平蔵 氏
新型コロナウイルスの影響で、経済に深刻な影響が出始めた。アメリカでは、議会予算局が4-6月期の成長率を年率換算で前期比約38%のマイナスと予想。日本でも同期間の成長率は、マイナス20%程度になると多くの機関が予測している。アメリカは失業率も4月に14.7%、5月はやや改善したが、13.3%だった。ひるがえって、日本の4月の失業率はわずかに悪化したものの2.6%にとどまる。この違いはあまりに大きい。
アメリカでは、経済の悪化は直ちに労働需要減少につながり、結果的に失業率は一気に上昇する。しかし、日本では、政府が企業に雇用調整助成金を出し、企業が雇用をつなぎ止める。結果的に失業は少ないが、「休業」が多いという結果になる。4月の労働力調査によると、完全失業者178万人に対し、休業者は597万人。ただ、これを潜在的失業者とみると、実質的な失業率は日本でも11%レベルになるとの試算もある。
もし、今回の不況が短期間で、かつその間に産業構造が変わらないと仮定すれば、日本の政策は悪くない。しかし、不況が長期になれば、助成金を長期間続けることはできない。また、産業構造が大きく変わるなら、ひとつの企業に労働力を縛りつけるより、失業保険でしのいで労働移動を促進する米国型の方がいい。今回の不況が短期で、かつ産業構造が大きく変わらないという仮定には、無理があるように思えるが…。
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(2020年6月1日)
1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。現在、東洋大学国際学部教授、慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】