日本の問題

70歳まで働き75歳から年金?

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

8月公表の年金の財政検証を受けて厚生労働省は2020年通常国会に上程の年金改革案作りを急いでいる。70歳まで働き75歳から年金を受け取る、そんな改革の方向性が伺える。NRI社会情報システムが2019年3月、シニア世代に就業意識などを尋ねた調査によると、55歳以上65歳未満の現役世代の「働き終えたい年齢」の平均はおおむね70歳だった。70歳まで働く意欲は旺盛だ。

働く年限の延長に伴い、厚労省は① 企業型確定拠出年金の加入年齢を現在の65歳未満から70歳未満に引き上げる、② 厚生年金の加入年齢上限を70歳から75歳に引き上げる、③ 基礎年金の納付年限を40年から45年(65歳まで)へ引き上げる案などを検討しているようだ。加入年齢や納付年限の引き上げは保険料収入の増加にも貢献する。

一方、選択制だが年金受給の開始年齢を現在の60歳~70歳から60歳~75歳に引き上げる案も議論される。受給開始を75歳へ繰り下げると、受給額を80%以上増額するという誘導策もある。繰り下げが増えれば年金支払いが抑制される。

在職老齢年金では65歳以上の就労者は月収47万円から年金が減額されるが、これを月収62万円へ引き上げて高齢者の就労意欲を高めるという。ただ月収62万円の高齢者は一握りで、高所得者優遇の批判がある。年金減額の拡大は年金財政を悪化させるという声もある。

2019年11月5日

過去記事一覧

大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏