地方創生はできるのか?
東洋大学国際学部教授・慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏
竹中 平蔵 氏
安倍内閣が「地方創生」を掲げたのは2014年9月のこと。その結果、地方経済は良くなったのか。意見は分かれる。有効求人倍率は全都道府県で1を上回り、地方経済が良くなりつつあるのは確かだが、多くの地方で人口減少が加速し、まちの将来が見通せないのも、紛れもない事実だ。
地方経済に関してはしばしば「トリクルダウン(滴り落ちる)」という言葉が使われる。東京などの大都市が豊かになれば、それが広く行き渡り、結果的に地方も豊かになる、という考え。だが、そんなに簡単に今の地方経済が良くなるとは考えにくく、より本質的な政策が必要だ。
重要なのは、地方自身が成果を出す仕組みをつくることだが、新しい事業を興そうとすれば、様々な規制に直面する。実は、規制のかなりの部分は地方自治体自身による規制だ。そのことは民泊新法(住宅宿泊事業法)の実施状況をみれば明らかだろう。もちろん国の規制緩和も大切で、地方自治体と地方企業が政府に規制緩和を働きかける仕組みこそ、国家戦略特区である。
もうひとつ指摘したいのは、「東京一極集中是正」の名目で、東京の活力をそぐような政策を行わないこと。東京の活力をそげば、地方経済の活性化はもっと困難になる。
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1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。現在、東洋大学国際学部教授、慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】