日本の問題

進まぬ老朽水道管の更新

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

6月18日に起きた大阪北部地震で水道管が破裂した。破裂したのは40年の法定耐用年数を10年以上も上回る複数の老朽水道管だった。

厚生労働省によると、耐用年数を超えた水道管の割合は2016年度末で全国平均14.8%になるが、更新率はわずか0.75%。2045年度には耐用年数を超える水道管が59.5%にもなるが、その更新は遅々として進んでいないのが実情だ。自然災害多発の折、このままでは老朽水道管の破裂、断水が繰り返されることになる。

水道事業は地方自治体が営む公営企業やその広域集団による独立採算制だ。人口減少による給水量減で水道料金収入は減少が止まらない。一方、水道管の維持・運営費用はほぼ固定され減らない。その結果、多くの事業体が赤字経営に陥り水道管の更新費用を捻出できないでいる。

更新費用は2020年代以降、年間1兆円に上るという見方もある。再び水道法改正案が浮上しているが、改正案が予定する水道事業の広域化や民間への運営権売却など経営効率化だけで更新費用を捻出できるとは思えない。いずれ水道料金引き上げという利用者負担の拡大、あるいは税負担による更新のための政府補助金の投入が議論されることになる可能性が高い。

2018年7月23日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏