初任給の底上げと格差
経済ジャーナリスト
大西良雄 氏
大西良雄 氏
若年労働力の不足が深刻化し、新卒初任給の底上げが進む一方、初任給格差も広がり始めた。
最近の新卒(大卒・大学院卒)の求人倍率は2012年の1.23倍を底に回復、2018年新卒は1.78倍に上昇した。従業員300人未満の求人倍率は6.45倍に達し、中小企業の新卒採用難は著しい(リクルートワークス調べ)。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、大卒初任給は2014年から年平均1%のペースで上がり、2013年の月額19.8万円から2017年には20.61万円に上昇した。伸びが低かった大卒女子の初任給も2017年から急上昇している。
新卒求人倍率の高い業種では初任給引き上げを迫られる企業も少なくない。2019年卒の採用で「初任給引き上げを実施または予定している」企業の割合が高い業種は建設や製造に加え、卸・小売、情報通信、飲食サービスなどサービス関連も目立つ(リクルートワークス調べ)。
2019年新卒の採用では人工知能やIoT(モノのインターネット)の時代に備えたIT(情報通信)人材の争奪が始まっている。優秀な人材を確保するため、全員一律ではなく、能力に応じて初任給を大幅に引き上げる企業も増えてきた。
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1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。