景気拡大の持続性
富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏
米山秀隆 氏
景気は5月で拡大期間が66カ月に達したとみられ、戦後最長の73カ月に近づきつつある。しかし、先行きは世界的な長期金利上昇、原油高、貿易戦争激化などのリスク要因があり、国内要因としては金融政策スタンス、増税という2つの影響も無視し得ない。
金融政策については、日本銀行が4月の会合で、物価目標の達成時期を削除し、中長期の達成を目指す方向に転じた。これまで、日銀は年80兆円とする国債買い入れ額を少しずつ減らしてきた。減額しても長期金利の0%誘導に支障はなかったためだが、過去の減額の際は円高を招いた。今後は目標達成時期削除でより減額しやすくなったが、こうした事実上の金融引き締めが円高を招いた場合、企業収益を圧迫する。一方、2019年10月の消費税率引き上げは引き上げ幅が小さく軽減税率の適用もあるため、消費者の負担増は過去の増税時よりは少ないものの、実質所得減は増税後の消費を圧迫する。
景気が成熟化する中での金融政策スタンス変更と増税は、景気失速を招くリスクがある。オリンピック投資の終了も加わり、増税後の景気は調整局面に入る可能性が高いため、政府は景気下支え策を打ち出そうとしている。
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1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
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