中国経済の見方
東洋大学国際学部教授・慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏
竹中 平蔵 氏
中国経済への厳しい見方が広がってきた。中国のGDPは今や日本の2.5倍、アメリカの3分の2近く。動向に関心が集まるのは当然だ。
中国政府は3月5日の全人代(全国人民代表大会)で2019年の経済成長率目標を6~ 6.5%とし、前年の6.5%前後から引き下げた。政府は33兆円という大型の減税を実施するが、懸念は企業債務がGDPの1.6倍にも達していること。経済の減速は不良債権問題を一気に顕在化させる可能性もある。
一方、中長期的な成長力に関しては従来、強気と弱気が混在していた。弱気派は、自由が制限され、法の支配が不十分な状況下でイノベーションは起こらず、成長力は次第に低下せざるを得ない、と主張。しかし近年、ビッグデータの競争が前面に出る中、国家資本主義の効用が注目され、強気派が台頭。それが、中国への脅威論にもつながっている。
中国経済については、このような短期と中期双方の視点を持つことが必要だ。短期的には成長率は低下するだろうが、政府は政策を総動員し、極端な悪化は防げるのではないか。
重要な点は、中国では成長率が1%低下すれば、雇用が200万人減少するとされていること。社会の安定のためには毎年1200万人の新規雇用が必要とされており、その意味で6%成長維持の「政治的重要性」は高い。このラインが守れるかどうか、当面の注目点だ。
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1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。現在、東洋大学国際学部教授、慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】