ダボス会議の後で…
東洋大学国際学部教授・慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏
竹中 平蔵 氏
今年も1月22日からスイスのダボスで、世界経済フォーラムの年次総会、いわゆる「ダボス会議」が開かれ、5年ぶりに参加した安倍晋三首相のスピーチに大きな注目が集まった。6月に大阪でG20サミットが開かれ、初めてその議長国となる日本の首相のスピーチだったためだ。
首相は堂々たる英語で、見事なスピーチをしたと思う。30分近いスピーチのうち、日本経済やアベノミクスについて触れたのは3分の1程度で、後は不安定化する世界の運営をどう行うか、G20議長として格調高い議論に終始した。今後の世界はビッグ・データをどう活用するかで経済社会のあり方が大きく変わること、この点について新たな世界ルールをつくる必要があること、大阪会議がその歴史的一歩になるだろう、といった内容だ。とりわけ「ギャップ・バスター」という表現を用いて、データを活用することで格差是正につなげるというメッセージは印象的だった。
問題は、その首相が日本に帰った途端、ワイドショー的議論に忙殺されることだ。厚生労働省の統計不正の問題は確かに重要な問題だが、内閣の運営を左右する問題にしてはいけないと私は思う。ダボス会議での前向きな論議と、国内のワイドショー的論議のギャップに愕然とするのである。
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1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。現在、東洋大学国際学部教授、慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】