「圏域行政」は特効薬になるか
九州国際大学非常勤講師
荒田英知 氏
荒田英知 氏
今後人口減少が加速することが予想される中、行政サービスをいかにして維持していくかが問われている。住民サービスの大半を担う市町村は戦後、その機能を拡充するため、昭和と平成の2度にわたって大合併が推進されてきた。
その結果、全国の市町村数は1718(東京特別区を除く)となったが、人口規模の差はなお大きく、最多の横浜市の約374万人に対し、離島を除いて最少の高知県大川村は407人である。
財政難も進み、住民サービスを効率的に維持するためには、一定の人口規模にさらに再編するべきという考え方もある。しかし、政治的合意や住民の理解を得ることは容易ではない。
そこで政府が推し進めようとしているのが「圏域行政」である。これは複数の市町村が連携して、公共施設などの行政サービスを共同運営するもので、実質的には中心市の役割が強化される方向になろう。今年7月に発足した第32次地方制度調査会が、新たな行政単位として圏域の法制化を答申する見通しだ。
2040年には市町村の半数が事実上消滅するとの人口推計もあり、新たな処方箋が早急に求められる。しかし、圏域行政がその特効薬になるかどうかはまだ不透明である。
2018年11月26日
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1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2017年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。