貿易戦争でも景気拡大が続く米国
大阪経済大学客員教授・経済評論家
岡田 晃 氏
岡田 晃 氏
米国労働省が発表した2018年10月の雇用統計は米国の景気拡大が持続していることを裏付けた。非農業部門の雇用者数は市場予想を上回る前月比約25万人増、失業率は前月と同じ3.7%で、2カ月連続で約48年ぶりの低水準を記録した。雇用は歴史的な高水準と言える。
また、平均賃金(時給)の上昇率は前年同月比3.1%増と、約9年半ぶりの伸びとなった。米国ではこれまで「景気拡大と雇用改善のわりに賃金上昇が鈍い」と言われてきたが、それを覆し、景気拡大が賃金上昇に波及してきたことを示している。それがまた消費拡大と景気持続につながる。
トランプ大統領は景気拡大が自らの政策の成果だとアピールしているが、そうではないだろう。世界を牽引するIT革命が経済の持続的成長をもたらし、米国経済そのものが持つ活力がうまく引き出されているとみるべきだ。
米国では10月に入って米中貿易戦争のエスカレートやサウジアラビアの記者殺害事件などで株価が急落し、世界市場全体にも動揺が広がった。世界を見渡すと波乱要因が多いだけに、米国景気の拡大持続は世界経済全体にとっても心強い材料である。しかし、今後は保護主義の影響が広がる可能性があり、要注意だ。
2018年11月19日
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1947年生まれ。
日本経済新聞社産業部記者、編集委員、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト(WBS)」マーケットキャスター、経済部長、WBSプロデューサー、テレビ東京アメリカ社長などを歴任し、2006年に経済評論家として独立。同年大阪経済大学客員教授にも就任。