「大いなる安定」の終わり
東洋大学国際学部教授・慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏
竹中 平蔵 氏
ここ数年の世界経済は大変安定した状況にあった。特に2017年は株・債券・不動産・外国為替などの資産市場は総じて安定的に上昇し、主要国で特に悪い地域はなかった。熱狂はないが安定した状況という意味で「大いなる安定(great moderation)」という表現が使われた。
リーマンショックによる経済の落ち込みを経験した後10年近く、緩やかな景気回復が続いてきたことになる。だが、一部で懸念されていたリスクが顕在化してくる可能性がある。その兆候が最近注目された。10月10日から11日にかけて、ニューヨークの株価が大幅下落し、これが東京や上海などにも波及、株価が大きく下がったのだ。
最大の要因は、米国の金利上昇だろう。米国では財政拡大(減税)と金融引き締め(金利引き上げ)という政策が採られている。これは、1980年代のレーガノミクスと同じポリシー・ミックスだ。レーガノミクスの時は世界の資産市場が動揺し、それが1985年のプラザ合意につながった。
今すぐ世界の株式市場などが大混乱するとは思わない。だが、「大いなる安定」は終わったと考えるべきだ。そこに、複雑な中東情勢や貿易戦争が重なる。ボラティリティ(変動率)の高い資産市場…。運用の巧拙が問われる局面に入った。
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1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。現在、東洋大学国際学部教授、慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】