訪日客4,000万人のハードル
経済ジャーナリスト
大西良雄 氏
大西良雄 氏
2018年の訪日外国人客は3,000万人を突破した。次は2020年の4,000万人が政府の目標だが、2018年7月以降は対前年同月比の伸び率が1けた台へ鈍化しており、今後2年間で1,000万人増(約33%増)という目標のハードルは決して低くない。
第一は中国の景気減速だ。訪日客数トップの中国は過剰な圧縮政策と対米貿易戦争が重なり景気が減速、家計消費も不動産債務が重荷となり失速し始めているようだ。2位韓国、3位台湾、4位香港にも中国の景気減速が波及し、家計の余裕が失われている。以上の上位4カ国を合わせると訪日客の約74%を占め、減速の影響は甚大だ。
第二は訪日客受け入れ能力の問題だ。格安航空を中心に航空便は増えているが、パイロット不足が深刻で、空港の受け入れ能力の問題もある。さらに宿泊も設備不足のうえ、スタッフの確保が難しい。民泊の拡大や入国管理法改正に伴う外国人就労の拡大によって補えるかが問われる。
前号で紹介されていたように、有名観光地の観光公害も深刻化している。1月にスタートした国際観光旅客税(出国税)で見込まれる税収約500億円が観光振興に加え、観光地の分散、観光公害の解消にも使われることを期待したい。
2019年1月21日
- トランプ政権の保護主義
(2018年4月2日) - 第4次産業革命、日本の可能性
(2018年4月9日) - “過度の悲観論”から脱却を
(2018年4月16日) - インバウンド
(2018年4月23日) - 初任給の底上げと格差
(2018年5月1日) - 「高圧経済」の功罪
(2018年5月7日) - デジタル・トランスフォーメーション
(2018年5月14日) - 景気の読み方
(2018年5月21日) - 明治150年に学ぶ“日本の底力”
(2018年5月28日) - 民泊新法
(2018年6月4日) - 先細る太陽光発電
(2018年6月11日) - 景気拡大の持続性
(2018年6月18日) - 米国の主張する「FFR」
(2018年6月25日) - イスラエルにて
(2018年7月2日) - 危機を乗り越え強くなった日本企業
(2018年7月9日) - 外国人労働者
(2018年7月17日) - 進まぬ老朽水道管の更新
(2018年7月23日) - 空き家ビジネス
(2018年7月30日) - ステルス・テーパリング
(2018年8月6日) - 新しい働き方
(2018年8月20日) - 観光で広がる経済成長の裾野
(2018年8月27日) - 廃校利用
(2018年9月3日) - 広がるシェアリングエコノミー
(2018年9月10日) - タワーマンションの今後
(2018年9月18日) - ベンチャー企業の「出口」
(2018年9月25日) - 地方創生はできるのか?
(2018年10月1日) - 外国人の視点に立った対応
(2018年10月9日) - ご当地ナンバー
(2018年10月15日) - なぜ、ユニコーン企業が出ないのか?
(2018年10月22日) - キャッシュレスによる地域活性化
(2018年10月29日) - 消費税の意義を考える
(2018年11月5日) - 「大いなる安定」の終わり
(2018年11月12日) - 貿易戦争でも景気拡大が続く米国
(2018年11月19日) - 「圏域行政」は特効薬になるか
(2018年11月26日) - 先端分野の外国人材も不足
(2018年12月3日) - 景気拡大に黄信号
(2018年12月10日) - 外国人労働のブレーキとアクセル
(2018年12月17日) - スーパー・シティをつくろう
(2018年12月25日) - 改元の年・2019年の景気は?
(2019年1月7日) - オーバーツーリズム
(2019年1月15日)
1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。