日本の問題

コンドラチェフの長波

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

景気は時間の経過とともに良くなったり、悪くなったりの循環を繰り返しているが、最も短い循環は数年サイクルで、在庫変動によって生じる。もっとも長い循環は40~50年周期で、ロシアの経済学者、コンドラチェフが発見した。

このような長期波動をもたらす要因は、技術革新にある。1990年代初めから世界経済は、コンドラチェフの長波の上昇局面に入ったが、この時期は冷戦終結に伴い、旧社会主義国が世界のマーケットに組み込まれるとともに、情報通信技術の発達により、世界のマーケットが一体化した。この結果、世界市場は同質化に向かい、過剰生産が生じやすくなった。

こうした傾向が行き過ぎると、自国経済を守ろうとする保護主義が強くなり、コンドラチェフの長波は下降局面に向かうことになる。保護主義の高まりに伴う、最近の世界経済減速は、こうした現象の表れと捉えられる。コンドラチェフの長波の上昇過程では、新興国が台頭し、覇権国に挑むことで摩擦が生じやすくなる。この点は現在、技術覇権で中国がアメリカに挑戦していることに表れている。過去には、覇権争いが戦争を招いたこともあったが、今回も対立は容易には収まらないようにみえる。

2019年3月11日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏