最低賃金と中小零細企業
経済ジャーナリスト
大西良雄 氏
大西良雄 氏
最低賃金は過去3年間、年率約3%ずつ引き上げられ、2018年度は全国加重平均で時給874円になった。政府は「骨太方針2019」で「より早期に全国平均が1000円になることを目指す」として引き上げを加速する構えだ。
これに対し、中小企業を会員に持つ日本商工会議所のアンケート調査では、最低賃金の引き上げが加速し、2019年度の引き上げ幅が40円(引き上げ率4.6%)になった場合、過半数(63.3%)の企業が「経営に影響が出る」と答え、その対策として最も多かったのは「設備投資の抑制等」で「正社員の残業時間を削減」、「一時金を削減」が続いた。
「影響が出る」と答えた企業の半数近くが「設備投資の抑制等」を挙げたのは深刻だ。最低賃金引き上げは労働生産性を引き上げて吸収するのが常道だが、設備投資を抑制すれば肝心の労働生産性が上昇しない。
日本の最低賃金が低いのは労働生産性が低いからだ。日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟36カ国中20位(日本生産性本部「労働生産性の国際比較2018」)。中でもパートタイマーへの依存度が高い中小零細企業、業種でいえば宿泊・飲食、小売り、介護などが低い。
中小零細企業が設備投資や業務改革で労働生産性を引き上げられる環境づくりが政府に求められる。最低賃金の引き上げ加速が倒産・廃業の引き金になっては元も子もない。
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1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。