転機迎えたふるさと納税
九州国際大学非常勤講師
荒田英知 氏
荒田英知 氏
2008年に創設され、ここ3年で急増したふるさと納税の制度が6月に改正される。過度な返礼品競争に歯止めをかけるのが狙いだ。
ふるさと納税の本来の趣旨は、都市部に集中する税収の一部を地方に回し、地域活性化に役立てようというもの。そこで住民税の1割を上限に、本人の意思で居住地以外の自治体に寄付し、その分が控除される仕組みだ。住民の納税者意識も高まると期待された。
2015年に上限が2割に引き上げられたころから、税収増をもくろむ自治体側が地域の特産を返礼品として贈る動きが本格化。返礼品を競い合う動きは全国に広がり、良質な米や肉などを市価より割安に入手できる例が続出した。
全国のふるさと納税を取扱うポータルサイトも活況を呈したが、「まるでネット通販」と呼ばれることも。商品券など地場産とは認め難い返礼品も現れ、制度の趣旨からの逸脱が目立つようになった。
こうした状況を踏まえ、今回の改正では返礼品を地場産品に限り、諸費用も含めて寄付額の3割以下に統一される。国に届け出て認められた自治体だけがふるさと納税の対象になるのだ。
国による統制は地方分権の精神に反するとの意見もあるが、まずは過熱したブームを鎮静化させたうえで、ふるさと納税の意義を問い直すことが必要であろう。
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1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2017年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。