出生数90万人割れ
九州国際大学非常勤講師
荒田英知 氏
荒田英知 氏
2019年の全国の年間出生数が90万人を下回ることが確実になった。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(中位)よりも2年早く90万人を割り込むことになる。1月から9月の出生数は前年比5.6%減で、30年ぶりの大きな減少幅となった。なぜ「令和のベビーブーム」とはならなかったかについて分析を待つ必要がある。
戦後の年間出生数には2つの大きな山があった。第1次ベビーブームの約270万人(1949年)と第2次ベビーブームの約210万人(1973年)である。その後、1975年には200万人を、1984年には150万人を割り込んで減少を続けてきた。以降も少子化には歯止めがかからず、2016年には1899年の統計開始以来初めて100万人を下回った。そこからわずか3年での90万人割れである。
ピーク時と比べて、同級生の数が3分の1になった社会を思い浮かべれば、事態の深刻さを実感できよう。すでに親世代も減っているから、人口減少は今後も確実に進む。これからできる手立ては、技術革新などで減少速度を実質的に遅らせ、負の影響を緩和するくらいしかない。
今年の正月は三が日を休業する商店が目立って増えた。これも人口減少時代に対処する社会変革の兆しかも知れない。出生数90万人割れは、人口減少の現実を直視せよという強烈なメッセージだと受け止めるべきであろう。
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1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2017年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。