日本の問題

イノベーションと人間力

東洋大学国際学部教授・慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏

私がセンター長を務める東洋大学グローバル・イノベーション学研究センター(東洋大学)がイノベーションに関する新しい世界ランキングを作成し、公表した。インベンション(発明)とイノベーション(変革)の間には、少なからぬ開きがある。トーマス・エジソンが偉大だったのは、電気のメカニズムを解明、新たな製品を開発した(インベンション)だけではなく、会社をつくって電気を一般家庭に販売した(イノベーション)ことにある。要するにイノベーションには、技術開発の力に加えて、様々な社会的要因が必要なのだ。

そこで、技術革新、国際調和、人間力などの分野で計58の指標を組み合わせ、データがそろう主要60カ国のインデックスを作成、ランキングした。同様の指標としては、スイス・IMD(国際経営開発研究所)のランキングがあるが、今回のものは「人間力」を重視した点に特色がある。学生の起業意向、留学生数などチャレンジ精神を示す指標や、大学の世界ランキングなどが人間力を示す指標で、全指標の約3分の1を占める。日本は全体のランキングが32位。ちなみに1位はシンガポールで、アメリカは9位、中国は15位という結果だった。ランキングそのものも興味深いが、日本のどこが強くて何が弱いのかが重要だ。技術革新で日本は3位だったが、人間力で57位、というのはなかなかショッキングだ。日本が解決すべき課題は重い。

2019年12月16日

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竹中平蔵 氏

1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。現在、東洋大学国際学部教授、慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】

竹中平蔵(たけなか へいぞう)