「コロナウイルス危機」に思う
東洋大学国際学部教授・慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏
竹中 平蔵 氏
深刻化する「コロナウイルス危機」。新聞やテレビの報道は、連日この問題で埋め尽くされている。
しかし、「大変、大変」と叫ぶばかりではなく、この機会にこれまでなかなか進まなかった経済の「デジタル・シフト」を、一気に進めることがより重要ではないだろうか。
発生元の中国は今、大変な状況を迎えているが、一方で大きな構造変化が進んでいる。アリババグループは、遠隔会議や決済ができるモバイルオフィスサービス「ディン・トーク」を国内1,000万社に無料で配布した。これによって、在宅勤務が一気に進み、働き方改革も進むだろう。
北京大学はこの数カ月の間に、全講義をネット配信できるシステムを構築。街に人が出なくなり、繁華街の商店やレストランの売り上げは低下しているが、その裏でネット販売や宅配・出前の分野が躍進している。まさに、デジタル・シフトがすさまじい勢いで進行しており、将来を先取りするような経済構造・システムの転換が生じているのだ。
日本の場合、デジタル・シフトのわかりやすい例として遠隔医療が挙げられる。また、遠隔教育がきちんとできれば、今回のような全校休校も必要なくなる。政治面ではインターネット投票なども視野に入ってくるだろう。何年か後に「コロナ危機は大変だったけど、あの時に社会生活はある意味で前進したな」と思えるような対策を期待したい。
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(2020年3月2日)
1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。現在、東洋大学国際学部教授、慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】