日本の問題

コロナ禍とデジタル化の進展

住宅・土地アナリスト
米山秀隆 氏

コロナ禍によってできなくなったリアルな活動の代わりとして、バーチャルな活動が様々な面で急速に台頭している。仕事ではテレワーク、教育ではオンライン授業、コミュニケーションではオンライン飲み会といった具合である。中でもテレワークはその典型であるが、従来、ツールは持っていても使っていなかったものが、緊急事態で一気に普及した。

バーチャルにはバーチャルなりの優れた特性があることが分かり、むしろリアルが果たす役割とは何なのかが問われている。「現場・現物」を重視して実施してきた製品出荷前の立ち合い検収さえもデジタルでできるといったメーカーの声もある。これからはほとんどのことはデジタルででき、現場に行ったり人に会ったりするのは、最後の一部分に限られるようになっていくのかもしれない。

アパレル販売では、遠隔で顧客に接客するサービスも登場している。顧客は通販サイトから気になる商品を選択、チャットで質問し、販売員は在宅でこれに対応する。この場合、もはやリアルな現場は不要である。不動産販売の場合は、最後の現場での確認は必要と考えられるが、それ以前の部分はビデオ通話やVR(バーチャル・リアリティ)を使った内覧などで、ほとんどデジタル化できると思われる。

コロナ禍で加速した流れは今後も後戻りすることなく進み、仕事や生活、社会を変えていくことになるだろう。

2020年5月18日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などの研究員を歴任。専門は住宅・土地政策、日本経済。著書に『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏