日本の問題

コロナがもたらした恩恵

学習院大学国際社会科学部教授
伊藤元重 氏

社会に大きな揺らぎが起きた時、世の中の仕組みや企業の行動が大きく変わる。そうした変化は必ずしも悪いものではない。多くの人が今、そうしたことを感じているのではないだろうか。

新型コロナウイルスは大変な危機的状況をもたらしたが、やむを得ず在宅勤務や遠隔授業を強いられてみて、今までの仕組みの中に潜んでいた大いなる無駄や弱点に気づいている人も多いはずだ。私もその1人だ。

たとえばウェブ会議の活用。実際にやってみて実感していることだが、パソコンで済む会議が随分多くある。これで移動時間が節約できるだけでなく、会議の時間も比較的自由に取れるようになった。それどころか、ウェブ会議をみんなが利用するようになって、これまで以上に有意義な会議が増えているように感じる。

私の場合は海外とのウェブ会議が増えた。数日かけて海外出張しなくても、気軽に海外の人と意見交換をできるようになったことは大きい。

大学では今、オンライン授業への切り替えで大変な状況だ。課題も多い。ただ、オンライン授業を行って気づいたことだが、毎回課題を出すせいもあるのか、学生からの質問が多い。教室で授業をやっている時には、授業後の質問はあまりなかった。教室で行う授業にももちろん意義はあるが、それにオンライン授業を組み合わせることで、教育の質が上がるということを確信した。

2020年6月1日

過去記事一覧

伊藤元重 氏

1951年生まれ。
米国ヒューストン大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授などを経て1993~2016年東京大学の経済学部と大学院経済学研究科の教授を歴任。2007~2009年は大学院経済学研究科研究科長(経済学部長)。現在、学習院大学国際社会科学部教授、東京大学名誉教授。
【伊藤元重研究室】

伊藤元重(いとう もとしげ)