東京圏、初の転出超過
九州国際大学非常勤講師
荒田英知 氏
荒田英知 氏
総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、東京都への7月の転入者数は前年同月比12.8%減の2万8,735人、転出者数は同1.5%減の3万1,257人で、差し引き2,522人の転出超過。神奈川、埼玉、千葉の3県を加えた東京圏も1,459人の転出超過で、外国人を含む統計になった2013年以降初の転出超過となった。
「コロナ禍」によるテレワークの広がりや大学のオンライン化などが影響したと考えられる。一過性に終わる可能性もあるが、様々な策を講じても揺らぐことのなかった東京一極集中を、「コロナ」が様変わりさせるとするなら注目すべき変化だろう。
年齢別では0~4歳、30~34歳、 35~39歳の子育て世代の転出が目立つ。この世代の地方志向の高まりは、東日本大震災後にも指摘されていた。小さな子どもを持つ若い親世代が、いち早く東京脱出を選択したとみることができる。
今後の人口動態を占うポイントは大学進学世代 (15~19歳) と就職世代 (20~24歳) などの若年層。長らくこの2つの年代が東京集中の山を高くしてきたが、地方の高校生の東京進学熱は冷めているとされ、地方圏の大学の多くで、地元人材を育成し、卒業生を域内に還流させる地域志向のカリキュラム構築が進んでいる。
コロナ後の社会がいかなる変化を遂げていくのか。その端緒を、来春の大学入試や就職動向から読み取れるかもしれない。
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1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2017年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。