日本の問題

都心居住人気の行方は?

住宅・土地アナリスト
米山秀隆 氏

「コロナ禍」でテレワークが普及し、常時出勤の必要がなくなったことから、通勤の利便性を考えて確保した住まいを引き払い、郊外や地方に転居する動きが一部で見られるなど、移住への関心は高まっている。だがその一方で、実際に移住に踏み切るわけではなく、むしろテレワークを経験したが故に、これまでの通勤時間の無駄に気づき、より通勤時間を短くしたいとの志向が強まっているとの調査結果もある。

人材情報会社の学情が行った調査では、テレワークを実施している20歳代は、今後の通勤時間の希望について約7割が短くしたいと答え、テレワークを実施していない20歳代の短くしたい回答約4割に比べて高い割合を示した。テレワーク実施者の短くしたい理由は「自由に使える時間を確保したい」、「テレワークで通勤時間に負担を感じた」が多かった。テレワーク経験により、終業後の時間を充実させることができると気づき、その結果、出勤する場合でも終業後の時間を有意義に使うため、通勤時間を短くしたいとの志向が強まったと考えられる。

完全にテレワーク化できれば、住む場所の制約はなくなるが、そうでなく、ある程度は出勤しなければならないとすれば、その便も考えて住まい選びをする状況はあまり変わらないことになる。それどころか、この調査結果はさらにその傾向が強まっている面もあることを示している。都心居住の人気は衰えそうにない。

2020年7月27日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などの研究員を歴任。専門は住宅・土地政策、日本経済。著書に『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏