日本の問題

観光立国の再出発

九州国際大学非常勤講師
荒田英知 氏

2012年以降、順調に増加を続けてきた訪日外国人観光客(インバウンド)だが、2020年に4,000万人としていた目標達成は「コロナ禍」によって水泡に帰した。訪日客がほぼゼロという状況から、観光立国はリスタートを余儀なくされている。

都道府県をまたぐ移動の自粛が全国で解除された6月19日、菅義偉官房長官は2030年に6,000万人という従来目標を引き続き堅持する考えを示し、その実現に「あらゆる策を講じる」と述べた。宿泊・運輸などすそ野の広い観光業界を、政府として支援するという意志表示である。

これを受けて「Go To トラベル」キャンペーンが7月22日から開始される。国内旅行を対象に旅行代金の最大半額、1泊あたり2万円を上限に支援する。先行き不透明な中ではあるが、新たなツーリズムの模索が始まる。

団体旅行から家族・個人旅行へ、周遊型から滞在型へという流れはすでにあったが、これに拍車がかかり、高級化・高付加価値化をもくろむ観光地も増えそうだ。地域資源にさらに磨きをかけることができるか、が問われてくる。

また、客の「3密」回避や従業員の健康管理など、あらゆる対策を地域ぐるみで講じ、それを上手に情報発信することが求められる。全国に300件近く設立されているDMO(観光地域づくり法人)が、地域における観光復活の司令塔として一層重要な役割を担うことになろう。

2020年7月13日

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荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2017年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏