新型コロナ問題の重要な視点
東洋大学国際学部教授・慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏
竹中 平蔵 氏
新型コロナウイルス感染症対策分科会(分科会)が、政府の政策に対して重要な役割を果たしていることは間違いない。しかし、私には以前からこの分科会に対するささやかな疑問があった。医療体制の拡充について、あまり意見が聞かれないことだ。
各省庁は、政策に関する審議会を持っている。そこには多数の有識者が集められるが、各人ほんの数分間意見陳述の機会を与えられるだけで、あとは事務局が引き取ってまとめることが少なくない。しばしば指摘される「官僚の隠れ蓑としての審議会」だ。実はこの分科会も、結局は厚生労働省の担当部局の影響下にあるのではないか、という疑問が消えない。分科会の上部組織にあたる有識者会議には35人が任命されており、分科会も現状16人と大所帯だ。これでは、実質的な取りまとめは「事務局」に委ねられてしまうだろう。
今、国民が最も懸念しているのは医療の崩壊だ。医療の世界では、公立病院などの勤務医やスタッフが極めて過酷な環境で治療に従事している一方、日本全体としての医療資源はごく一部しか活用されていない。ここにメスを入れることが、最も重要だと感じるのだが、それは厚労省などがあまり触れられたくない問題なので、分科会が忖度して…というのは考え過ぎだろうか。
政治のリーダーシップで、感染抑制とともに医療体制の拡充がもっと議論されるべきだと強く感じる。
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1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。現在、東洋大学国際学部教授、慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】