日本の問題

急がれる日本のデジタル化

学習院大学国際社会科学部教授
伊藤元重 氏

先日、ある国際会議で「新型コロナ後はどの国の経済的な勢力が高まるのか」をコメントするように求められた。この会議の主催者の念頭には、いち早く感染の拡大を抑えることに成功し、経済成長率の回復が予想される中国のことがあったのだろう。

新型コロナ以外にも様々な要因があるので、中国の勢力が高まるのかどうかについてコメントするのは難しい。ただ、経済の回復のスピードにどのような要因がかかわってくるのかを考えてみることは意義がある。

中国に比べ、欧州や米国の状況は感染を抑えるという意味でうまくいっていない。現時点でさらに感染が広がっている地域もある。それが景気回復のお荷物になっている。そうした観点からみれば、中国並みとはいわないが、日本の状況は欧米に比べるとまだましだ。ただ、それでも日本経済の回復のスピードの遅さが予想されていることは気になる。

なぜ、回復のスピードが遅いと予想されているのか。要因のひとつはデジタル経済の活用の遅れにある。米国が顕著だが、感染が広がる中でデジタル技術の利用はさらに広がっている。こうした技術を推進する企業の株価も好調だ。中国の経済の回復が早いことにも、デジタル技術の活用に積極的なことがある。政府もデジタル庁を立ち上げ、遅まきながらデジタル化の推進に本気になりつつあるが、それが経済回復のスピードアップにつながればよいのだが。

2020年10月26日

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伊藤元重 氏

1951年生まれ。
米国ヒューストン大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授などを経て1993~2016年東京大学の経済学部と大学院経済学研究科の教授を歴任。2007~2009年は大学院経済学研究科研究科長(経済学部長)。現在、学習院大学国際社会科学部教授、東京大学名誉教授。
【伊藤元重研究室】

伊藤元重(いとう もとしげ)