日本の問題

コロナ対策の副作用

東洋大学国際学部教授・慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏

新型コロナウイルス感染症が日本経済に大きな影響を与えている。4-6月期の実質GDP成長率は年率換算で27.8%減と、最大の落ち込みだった。今回、政府は従前と格段に違う大胆な政策を採ってきた。たとえば、住民基本台帳記録者全員への一律10万円の給付、売り上げが大幅に減少している中小企業・自営業者への最大200万円(中小企業)の持続化給付金など、どれをとっても異例の政策で、短期的にはやらざるを得なかった政策といえるだろう。しかし、こうした政策によって、新たな問題が生じようとしている。

2000年代初頭からリーマン・ショックごろまで、日本の一般会計の規模は80兆円台の水準だった。それがリーマン・ショック時の財政拡大で100兆円を超え、今回は第2次補正予算までで160兆円レベルに達した。

内閣府の試算によれば、今年度の財政赤字は100兆円近い水準になる。重要なのは、事業主に対する雇用調整助成金などの給付金がこの秋に期限を迎えることだ。これをさらに延長せよという意見は当然根強い。さらには、航空産業などに資本性の資金を投入すべきとの声もあり、財政への要求はとめどなく高まる。

今後真剣に議論すべきは、企業に対する支援を従来の「給付型」から「貸付型」にし、政府全面依存ではない自助努力型に変えていくことではないだろうか。そうでなければ、経済対策の副作用は極めて深刻になる。

2020年8月31日

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竹中平蔵 氏

1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。現在、東洋大学国際学部教授、慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】

竹中平蔵(たけなか へいぞう)