テレワーク人材獲得競争の激化
まちとしての魅力を発信することで、移住者や、テレワークなどの一時的滞在者を受け入れようとする自治体は以前から多かったが、働く場の自由度が高まる中、人や企業を誘致できる可能性が広がっている。
テレワーク人材については、たとえば北海道の北見市や斜里町が積極的に受け入れてきた。斜里町のテレワーク拠点「しれとこらぼ」は2015年開業で、首都圏の大手企業などのテレワーカーの滞在を受け入れている。また、和歌山県白浜町のように、テレワーク人材受け入れを契機にIT企業誘致が進んだケースもある。
IT人材、IT企業については、神戸市が六甲山の企業保養所などの遊休物件への誘致を進めようとしている。六甲山はかつて「西の軽井沢」と呼ばれ、企業保養所が多数建てられたが、今も使われているのはわずかである。従来、六甲山へのオフィス立地は規制してきたが、開発基準を緩和し、改修費用として最大1,350万円助成する仕組みを設けた。
移住者などの呼び込みについては地域で求める人材をあまり絞り込まず、広く呼びかけるケースが依然として多いが、これらの例はテレワーク人材やIT企業などターゲットを絞り込んで呼びかけ、そうした人材受け入れを地域活性化の起爆剤にしようという取り組みである。今後は働く場所の制約のない人々や企業の誘致をめぐる地域間競争が激しくなっていくことが予想される。
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(2020年9月28日)
1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などを経て2020年9月から現職。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】