日本の問題

新型コロナ感染拡大と医療体制

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

新型コロナウイルスの感染拡大が経済活動の委縮をもたらし、経済成長を阻害している。感染拡大が感染を克服するためのイノベーションを誘発すれば成長は確保できるのだが、今のところそうはなっていない。

新型コロナ患者の急増は医師や看護師、医療施設などの医療資源の枯渇をもたらした。医療分野のボトルネック(供給隘路)は深刻化している。政府レベルでの対策が求められる。最重要の対策はコロナ専門医師、看護師の増強だ。専門知識の習得などには手間と時間がかかる。医療分野の各種規制緩和や教育機関の拡充により専門医や看護師の育成・増強を早急に実現する必要がある。早急なワクチン開発ももちろん大切だ。アメリカのダウ工業株30種平均は新型コロナワクチンの開発進展の情報をはやして史上初めて3万ドルを突破した。日経平均も連れ高しているが、開発には不確定要素も大きく株価は期待先行の感もある。

一方で、日本の製薬会社によるワクチン開発の進展情報が少ないのは寂しい限り。新型コロナ対策は、私たちの生命を守る安全保障政策だ。安全保障といえば軍事的側面を連想しがちだが、医療は食糧と並ぶ重要な安全保障アイテム。国家予算を大きく割くのに躊躇してはならない。さらに、政府は医療産業の拡大を図るために医療分野に多い不要不急の規制を可能な限り撤廃して医療産業の活性化を実現する必要がある。

2020年12月7日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏