産業再生への道
東洋大学国際学部教授・慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏
竹中 平蔵 氏
「新型コロナ危機」は収束していないが、日本経済は最悪期を脱し、緩やかに回復しつつある。今後は産業再生の進め方が課題となるだろう。
新型コロナの影響で、4~6月期の実質GDP成長率(2次速報値)は年率マイナス28.1%と大幅なマイナス成長となった。注目されるのは、企業部門の債務が急拡大したこと。法人企業統計によると、今年3月末から6月末までのわずか3カ月で、企業債務(長短借入金と社債の合計)は一気に約35兆円(約7%)増えた。これは、バブル崩壊後の4年(1989~1993年)で135兆円余の債務増加があったことと比較しても極めて急激な拡大だ。銀行部門は不良債権を抱え、企業部門は過剰な債務を抱えるという状況に近づいている。つまり日本の産業部門はバランスシート調整の必要性に迫られるのだ。思い起こせば、バブル崩壊後の日本経済はこのような重いバランスシートを引きずり、過剰債務が成長を阻害する「デット・オーバーハング」を長年解消できず、低迷を続けた。問題解決に役割を果たしたのは、金融当局が銀行部門の不良債権処理を強力に進めたことだが、その裏で産業部門(非金融部門)のバランスシート調整を進めるための新しい組織を時限付きでつくったことも大きかった。「産業再生機構」である。
こうした組織を再度設置するといった大胆な政策も含め、産業再生の議論を活発化させねばならない。
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1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。現在、東洋大学国際学部教授、慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】