日本の問題

日経平均3万円乗せの虚実

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

日経平均株価が2月15日、終値で3万84円となり、3万円の大台を回復した。1989年に記録した史上最高値3万8,915円には及ばないが、1990年8月2日の3万245円以来、30年半ぶりの大台乗せとなった。

この間の日本経済は伸び悩んだが、企業の構造改革が進み、上場企業の純利益は1990年に比べ約2倍に増加した。直近の2020年10~12月期はおおむね5社に1社が史上最高の純利益となった。

だが、アメリカのダウ工業株30種平均は同じ30年間で3,000ドル前後から3万1,000ドル台へ10倍以上、上昇している。グーグル(持ち株会社の名称はアルファベット)、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップルの「GAFA」に代表される巨大IT企業が世界の株式市場を牽引。この4社にマイクロソフトを加えた5社の時価総額は日本円換算で800兆円前後に上り、東証1部上場約2,190社全体の時価総額731兆円余(2月15日)を上回る。日本の上場企業の収益改善も進んだが、米国の巨大IT企業に遠く及ばない。

スイスのビジネススクールIMDの2020年国際競争力ランキングによると、日本は過去最低の34位に沈んだ。株価の3万円台乗せは期待先行で、「現実」との乖離が大きいのではと違和感を覚える。日銀による巨額のETF(上場株式投信)買いや金融緩和が支えた株価に過ぎないと指摘する向きは少なくない。

2021年3月1日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏