日本の問題

新型コロナ禍と都市の盛衰

九州国際大学非常勤講師
荒田英知 氏

新型コロナウイルスに翻弄された2020年は、人口移動にも従来なかった変化が生じた。総務省の住民基本台帳人口移動報告(2020年結果)から、全国21大都市(東京23区と20政令指定都市)の動向をみた。

これまで全国最多を続けていた東京23区の転入超過数は1万3,034人と2019年の6万4,176人から急激に減った。その他の首都圏5市はいずれも転入超過だが、千葉市、横浜市、相模原市は前年より増え、さいたま市と川崎市は減った。在宅勤務の普及などで東京都心部への人口集中圧力が弱まったと考えられる。

転入超過が最多となったのは大阪市で1万6,802人。逆に京都市は2,020人の転出超過で最多となった。神戸市と堺市も転出超過が続いており、関西圏の都市構造にも変化の兆しがある。その他の拠点都市では札幌市と福岡市の転入超過が顕著で、圏域内の一極集中が加速している。

人口減少が進む中で、各都市は転入者をいかに増やすかを地方創生の柱に据えてきた。この点では、5年ぶりに転入超過に転じた新潟市は満足いく結果だろう。一方で、静岡市と浜松市は産業構造が異なるにもかかわらず、似たような転出超過が続く。一方、転出超過が最多になる年が多かった北九州市は下げ幅を縮めた。

都市の盛衰には様々な要因が絡むが、新型コロナ禍の災い転じて福となす都市が出てくるのか、今後も注目していきたい。

2021年3月15日

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荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2017年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏