日本の問題

復活を遂げた「地ビール」

地域政策研究家
荒田 英知 氏

1990年代後半に全国的なブームとなった「地ビール」。21世紀に入って人気に陰りが見えていたが、ここ数年の持ち直しが目覚ましい。

地ビールブームの発端は1994年。酒税法で事業者に課される年間最低製造量が2,000klから60klへ大幅に規制緩和されたことによる。

「まちおこし」の新たな手法として翌年には17醸造所が創業。1999年には全国で312カ所を数えるほどになった。しかし、その品質や経営は玉石混交で2011年までに213カ所へ淘汰が進んだ(きた産業調べ)。

この状況を一変させたのが、アメリカで起きた「クラフトビール」ブームの日本への波及である。「小規模」「独立」「伝統製法」を売り物にするクラフト(職人技)精神を冠することで、地ビールは息を吹き返した。

品質にこだわる醸造所が増え、かつてのブームとは様変わり。2017年に全国308カ所と往時に並んで以降、年々増加を続け2021年には528カ所に達している。

新型コロナ禍で業界全体が大打撃を受ける中、地ビール主要75社の2021年1-8月の総出荷量は前年同期を7.7%上回った。ビール大手4社の2021年1-6月の販売数量が前年同期から6.0%減少したのと対照的である(東京商工リサーチ調べ)。巣ごもり需要を取り込むネット販売の強化が奏功しており、いまや地ビールは地域の名物から全国規模の市場が形成されるに至っている。

2021年12月13日

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荒田 英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学を卒業後、PHP研究所に入社。地域政策分野の研究員として30年以上全国をフィールドワーク。北海道大学特任教授、九州国際大学非常勤講師も務めた。

荒田 英知 (あらたひでとも) 氏