日本の問題

DXとGX

学習院大学国際社会科学部教授
伊藤元重 氏

新型コロナ禍を経験して日本社会は大きく変わろうとしている。新型コロナ前の状態には戻らないだろう。そうした変化の中で注目されているのが「DX」と「GX」である。

DXはデジタルトランスフォーメーションのこと。デジタル技術の革新が、社会や企業を変える原動力になるという概念だ。そしてGXはグリーントランスフォーメーションのこと。気候変動への対応が社会や企業を大きく変える原動力になるというメッセージだ。DXについては新型コロナ危機以前から言われていたが、その表現と連動する形で最近はGXという呼称が使われている。

なぜ、トランスフォーメーション(変革、あるいは変身)という表現が使われるのだろう。大きな変化の中で企業に大胆な変革が求められ、そして社会が変身していくことが予想されるためだ。悲観的に捉える必要はない。新型コロナ前の世界経済は構造的不況と呼ばれる状況にあった。低成長・低金利・低インフレという「低体温」の状況にあり、企業の投資も低調だった。構造的不況から抜け出すには、新たな課題に向けて積極的に投資することが必要となる。

DXやGXが発信しているメッセージはデジタルやグリーンに正面から取り組まない企業は取り残されるということだ。諸外国では、この2つの"X"に対応するための大胆な政策も打ち出されている。日本も遅れるわけにはいかない。

2021年10月18日

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伊藤元重 氏

1951年生まれ。
米国ヒューストン大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授などを経て1993~2016年東京大学の経済学部と大学院経済学研究科の教授を歴任。2007~2009年は大学院経済学研究科研究科長(経済学部長)。現在、学習院大学国際社会科学部教授、東京大学名誉教授。
【伊藤元重研究室】

伊藤元重(いとう もとしげ)