日本の問題

タワマンの維持・修繕問題

大阪経済法科大学
経済学部教授
米山秀隆 氏

タワーマンション(タワマン)の供給は2000年代に入ってから急増した。その時期に供給された物件が築15年程度となり、1回目の大規模修繕が必要になる時期に順次近づいたことで、タワマンが適時・適切な修繕実施により、先行きも資産価値を保っていけるかどうかが、ここ数年注目されてきた。

一般のマンションが抱える管理や維持・修繕の課題は、タワマンとなれば格段に難しくなる。タワマンは500戸を超すような大規模な物件が珍しくないが、区分所有者が増えれば増えるほど合意形成は難しくなる。また、一時的な住まいや投資対象と考える区分所有者が多くなれば、管理や維持・修繕への関心は低くなりがちである。

そうした中でも、永住するにしろ、投資対象として保有するにしろ、資産価値を維持することが自分たちの利益になるというような共通認識を形成して、維持・修繕に積極的に取り組む管理組合も出てきた。十分な修繕積立金を確保して長期修繕計画の実効性を高め、中古市場での競争力を保とうとするものである。そうした管理組合の活動を、ウェブにより積極的に発信している。

タワマンの維持・修繕が適切に行われず、タワマンがいずれ廃墟に至るという「タワマン廃墟論」も一部で語られるが、長期的にはそうなる物件と、価値を維持できる物件に二極化していくのではないだろうか。

2021年10月4日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などを経て2020年9月から現職。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏