日本の問題

進化を続ける「道の駅」

地域政策研究家
荒田 英知 氏

今では全国どこに出かけても見かけるようになった「道の駅」。1993年に103カ所が開設されて以降、今では1,193カ所まで拡大(2021年6月11日現在)。妙手が少ない地域活性化策の中で異例の成功を収めている。

当初の整備目的は、駐車場やトイレを24時間、誰でも利用できる「休憩機能」であった。これに道路や気象、観光などの「情報発信機能」が加わったことで利用者が増加。「ご当地グルメ」や地場産品の直売で集客力を高める例が目立つようになる。

さらに温泉や体験、宿泊施設を併設して、立ち寄りスポットではなく自ら目的地になることが近年の主流である。これは「道の駅」のテーマパーク化とも評される。

もっとも「道の駅」は外からの誘客だけを狙っているのではない。地域住民の利用価値を高める「地域連携機能」も大きな柱だ。地元のバス路線に組み込んで、高齢者らが出かけやすくし、日常生活用品も販売することで経営の安定性が増すという。さらに行政窓口や診療所、子育て施設などと一体化することで、地域の生活基盤を維持する拠点を形成しようとする動きもある。最近では災害時の避難所や物資の備蓄庫としての活用策にも注目が集まっている。

全国一律でなく、様々な地域事情を柔軟に織り込んできたことが「道の駅」の成功をもたらしている。社会の変化が加速する中、さらなる進化に期待したい。

2021年9月21日

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荒田 英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学を卒業後、PHP研究所に入社。地域政策分野の研究員として30年以上全国をフィールドワーク。北海道大学特任教授、九州国際大学非常勤講師も務めた。

荒田 英知 (あらたひでとも) 氏