日本の問題

「起業家育成高専」が開校へ

地域政策研究家
荒田 英知 氏

徳島県の山あいにある人口約5000人の名西郡神山町は、地元NPOが早くから移住受け入れ支援に取り組み、近年は企業のサテライトオフィス開設が相次ぎ、地方創生の先進地として全国から視察者が集まる。

その神山町に2023年4月、「神山まるごと高等専門学校」が開校する。仕掛け人として学校法人理事長を務めるのは寺田親弘氏。「それ、早く言ってよ~」のCMで知られるクラウド名刺管理サービスのベンチャー企業Sansanの創業者である。

2010年に同社のサテライトオフィスを神山町に置いた寺田氏は「学校で起業に資するものを習った記憶がない」と高専設立に動いた。賛同企業からの寄付金で学費無償化を目指し、1期生分は実現のめどがついた。高専の新規設置認可は19年ぶり。

15歳からの5年間、全寮制の「学び舎」でテクノロジーとデザイン、起業家精神を「まるごと」学ぶ。「未来を変える力を身につけた独自の人間を育む」と挑戦的な教育理念を掲げる。

初年度の募集定員40人に対し、オンラインでの説明会には数百人が参加。8月に行われたサマースクールを取材したイギリスの公共放送BBCは、集まった若者たちの様子を「まさに日本政府が見たがっている光景」と報じた。

スタートアップ育成を急ぐ国の政策を先取りする民間主導の高専がいかなる人材を輩出するか、期待を込めて見守りたい。

2022年11月7日

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荒田 英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学を卒業後、PHP研究所に入社。地域政策分野の研究員として30年以上全国をフィールドワーク。北海道大学特任教授、九州国際大学非常勤講師も務めた。

荒田 英知 (あらたひでとも) 氏