日本の問題

動き始めた「スマートシティ」

地域政策研究家
荒田 英知 氏

人口減少や高齢化の進展により、私たちの生活空間である都市や地域は多くの課題に直面している。それらに対してICT(情報通信技術)やAI(人工知能)を駆使して、最適化や利便性の向上を図る取り組みが始まっている。これが「スマートシティ」で、日本でも2010年ごろから各地で展開されている。

いずれも、革新的な技術開発を進める企業が、ある都市や地域を舞台に社会実装を可能にするための実証実験に着手しているという構図だ。注目すべき事例のひとつが、トヨタ自動車が静岡県裾野市の工場跡地に着工した「ウーブン・シティ」である。自動運転やライドシェア専用の道路を備えたモビリティの未来都市で、2025年にも入居が始まる。

スマートシティが生活全般を支えるためには、様々な分野での実用化が必要になる。たとえば、健康・医療 (岡山県吉備中央町、長野県茅野市、石川県加賀市)、子育て支援(兵庫県加古川市)、エネルギー(千葉県柏市)、地域防災(徳島県美波町)などが挙げられ、その先に求められるのはそれらの複合化である。政府も5分野以上をカバーする横断的な取り組みを後押しする「スーパーシティ」制度を2020年度に創設している。

今後は各地で具体化が進むと期待される。それぞれの成果を互いに取り入れる「合わせ技」を模索しながら、スマートシティは進化の道のりを歩んでいくことだろう。

2022年5月16日

過去記事一覧

荒田 英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学を卒業後、PHP研究所に入社。地域政策分野の研究員として30年以上全国をフィールドワーク。北海道大学特任教授、九州国際大学非常勤講師も務めた。

荒田 英知 (あらたひでとも) 氏