日本の問題

源頼朝に学ぶ"成功の秘訣"

大阪経済大学客員教授・経済評論家
岡田 晃 氏

NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が話題だ。流人だった源頼朝が平家を滅亡させ、鎌倉幕府を樹立したのはまさに壮大なドラマだが、彼はなぜそれを成し遂げられたのか。そこには、現在の企業戦略にとって重要な3つのヒントが隠されている。

第1はピンチをチャンスに変えたことだ。頼朝の挙兵は、実は追いつめられた末のことで、人数もわずか30人程度だった。そのうえ、緒戦こそ奇襲で勝利したものの、第2戦の石橋山の戦いで大敗した。「もはやこれまで」と自害してもおかしくない状況だったが、頼朝はあきらめず、船で安房へ逃げ延びた。この執念がチャンスを呼び込むことになる。

頼朝は安房で再び兵を集めつつ、関東各地の武将に参陣を呼びかけた。この時に威力を発揮したのが「源氏の嫡流」という強力なブランドだった。これが第2の戦略だ。その効果で、1カ月後には数万の大軍に膨れ上がった。

第3は、ニーズの変化を取り込んだこと。頼朝のもとに駆け付けた武将は、北条をはじめ、三浦、土肥、畠山など平家の一族が多かった。土地との結びつきが強い彼らは、京で貴族化した平家の主流に不満を持ち、領地や権益を守ってくれる盟主として頼朝を奉じたのだった。

頼朝はこれが新しい時代のニーズと理解し、関東で足場を固めることを優先した。その結果、初の本格的な武家政権樹立となったのである。

2022年2月14日

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岡田 晃氏

1947年生まれ。
日本経済新聞社産業部記者、編集委員、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト(WBS)」マーケットキャスター、経済部長、WBSプロデューサー、テレビ東京アメリカ社長などを歴任し、2006年に経済評論家として独立。同年大阪経済大学客員教授にも就任。

岡田 晃(おかだあきら)