日本の問題

新しい資本主義とは?

慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏

岸田内閣の看板政策として「新しい資本主義」が掲げられた。岸田首相を議長とする「実現会議」が設置され、国会の施政方針演説でもこの問題に多くの時間を割き、先般のダボス・アジェンダ2022のスピーチでも中心は新しい資本主義だった。

メディアでは、これがアベノミクスの否定との解釈がなされる向きもある。しかし、岸田首相は現実には「アベノミクスは大きな成果を挙げた」としたうえで、「時代の要請に応じるために、そのたらざる部分を補う」との趣旨の発言をしている。

そもそも新しい資本主義という言葉自体は決して新しくない。資本主義は常に変化してきたからだ。1960年代に英米などは福祉国家を目指したが、その結果経済活力が低下し、その是正のために市場活力の活用が指向された。しかし今、格差拡大などの弊害が出始めていること、第4次産業革命の中で中国の国家資本主義が大きな存在感を示していることから、国と民間の役割の見直し、新しい官民協力が必要になっている。これは世界的なムーブメントで、岸田首相はそのベストプラクティスを世界に示したいと述べている。

具体的には、4つの成長戦略と3つの分配政策を掲げている。その中でとりわけ注目されるのは「デジタル田園都市」と「人への投資」。こうした理念はダボス会議でも高く評価された。問題はそれをどのように具体化するか…力量が試される。

2022年1月31日

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竹中平蔵 氏

1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】

竹中平蔵(たけなか へいぞう)