日本の問題

安全保障のインフラを考える

慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏

ロシアのウクライナ侵攻には、世界が驚嘆し、怒りを覚えているだろう。主要国が対ロシア制裁措置を講じている。中でもロシアの外貨準備を凍結した効果は大きい。ロシアの外貨準備の6%程度は日本円で保有されており、日本の協力も一定の役割を果たしているといえる。

今回、安全保障に対する関心が一気に高まったことを受け、国内の政策論議を活性化することが必要だ。安倍晋三元首相は核共有を示唆したが、そうした問題以外に以下の2点について議論を深めるべきだと思う。

第一は、諜報機関を設置することだ。情報が重要性を増していることは、誰も否定しないだろう。しかし、日本には安全保障に関する情報を総合的に収集・分析する機関はない。内閣官房に情報調査室があり、約200人が勤務しているが、アメリカのCIAは約2万人を擁するともいわれ、しかも高度な専門家集団だ。

第二は、セキュリティ・クリアランス(機密情報の扱いに関する適格性確認)の制度を明確にすること。ある地位に就くと、自動的に機密情報にアクセスできるようになるが、その人物が機密を保持する資質を備えているのか、バックグラウンドの調査がなされねばならない。アメリカではそのために長い期間をかけて厳しい調査がなされるといわれる。

ウクライナの状況はなお予断を許さないが、こうした時こそ自らの安全保障インフラを考え直す必要がある。

2022年4月11日

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竹中平蔵 氏

1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】

竹中平蔵(たけなか へいぞう)