格差は拡大しているのか
日本の所得格差は一般には拡大しているイメージが強いと思われるが、実際はどうか。内閣府によれば働く人の労働所得の格差は、2002年から2007年にかけてジニ係数が上昇したが、2012年以降は低下した(ジニ係数は0~1の値をとり、高いほど格差拡大)。
ジニ係数に影響を与える要因としては、景気、働く人の年齢構成、雇用形態などがある。景気が良くなると多くの人が職を得やすくなって格差は縮小し、逆に景気が悪くなると職を得られない人が増えるため格差は拡大する。2012年以降はアベノミクスによる景気拡大期で、これがジニ係数の低下要因となった。
一方、働く人の年齢構成が高くなると格差は拡大する。年齢を重ねるにつれ、稼げる額に差がつくためである。近年は団塊世代の引退に伴う現役高齢世代の減少が、ジニ係数の低下要因となった。さらに、雇用形態に違いが出てくると格差は拡大する。近年は非正規雇用の増加が、ジニ係数の上昇要因となった。
これらのうち景気を主な要因として、ジニ係数は低下したと考えられる。ただし、新型コロナ禍後は不況によりやや上昇した可能性が高い。
他の先進国との比較では、日本のジニ係数は米・英よりは低いが、独・仏よりは高い。近年は日本の格差は縮小傾向にあったとはいえ、格差問題は決して小さな問題とは言えないことを示している。
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(2022年2月28日)
1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などを経て2020年9月から現職。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】