日本の問題

経済をリアルタイムで把握

大阪経済法科大学
経済学部教授
米山秀隆 氏

経済のその時々の動きは、政府が毎月発表している様々な統計調査によって知ることができる。家計の消費動向ならば総務省による「家計調査」、企業の生産動向ならば経済産業省の「鉱工業指数」などがその代表である。しかし、これらの調査結果の発表は翌月末や翌々月など、時間がかかる。発表された時点では過去の動きであり、経済のリアルタイムの動きを示すものではない。

近年はこうした公式統計とは別に、様々な分野でその活動を示すビッグデータが蓄積されており、それを経済動向の分析に活用しようとする動きが活発化している。

例えば、消費動向ならクレジットカードの利用履歴、店頭のPOS(販売時点情報管理)データ、家計簿アプリの支出記録などがあり、日本銀行はこれらのビッグデータに基づき、消費動向を従来より約3週間早く把握できるという研究結果を示している。

また、生産動向については内閣府が、トラックのカーナビデータ(ナビタイムアプリを導入した車両の通行データ)を活用することで、公式統計よりも2カ月弱早く把握できるという研究結果を示している。

統計データは政府が調査してつくるものと決まっていたが、ビッグデータを活用することで、より早く実態を把握できる可能性が高まっている。近未来は、リアルタイムデータに基づいて経済分析、経済論議を行うのが普通になっていくだろう。

2022年9月26日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などを経て2020年9月から現職。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏