日本の問題

「ダボス会議」を振り返る

慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏

世界の政財界リーダーが2,000人規模で集う世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)が、時期を1月から5月にずらして約2年ぶりに対面方式で開催された。私にとっても2年数カ月ぶりの海外出張となった。

今年の最大の関心事は、なんといってもロシア・ウクライナ問題だ。ヨーロッパの参加者からは「Unity(団結)」という言葉が頻繁に発せられた。なかでも特に関心を集めていたと思われるのが、食料不足問題。春先から戦禍が広がり、穀倉地帯で種まきができていないため、秋以降の収穫が大幅に減少する懸念があるのだ。また、穀物輸送路の黒海が戦場となり、ロシア軍が封鎖しているという現状もある。これらが続くと、アフリカで深刻な食糧危機・飢餓が発生するだろう。そして政情が不安定化し、テロが広がって欧州に波及するかも知れない…。こうした欧州の切羽詰まった思いが感じられた。

その一方で、我々が懸念する中国・台湾の問題は、あまり大きな話題とはならなかった。ちょうどそのタイミングで、東京ではQUAD(日米豪印首脳会合)が開催され、また中国は「ゼロコロナ対策」のため、日中首脳ともダボス来訪が実現できなかったのだ。その意味で、アジアの存在感は例年より低く感じられた。

ダボス会議は、いわば各国のIRの場。来年1月の会議には、ぜひ日本の政治リーダーも参加し、グローバルな議論をリードしてほしいと願う。

2022年6月27日

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竹中平蔵 氏

1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】

竹中平蔵(たけなか へいぞう)