日本の問題

内閣支持率を考える

慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏

岸田内閣発足当初(2021年10月)の支持率(NHK調査)は49%。出だしとしては決して高くはなかったが、2022年7月の参院選後には発足後最高の59%にまで上昇した。しかし、この10月には38%にまで低下。安倍元首相の国葬問題や旧統一協会への対応に対する批判が支持率低下の要因と考えられている。

しかし、支持率の低下にはより構造的な問題もあろう。安倍氏は若い世代の高い支持を受けていたが、高齢者からは厳しい評価もあった。一方の岸田氏は、安倍氏に批判的だった高齢者層から支持を得たと考えられている。

ただし、これはあくまで消極的な支持と考えるべきで、国葬問題などによって消極的な支持が不支持にシフトしたと考えるべきであろう。岸田氏からみれば、ライバルであった安倍氏が他界したことによって、自らの支持率が低下したという皮肉な結果を招いたことになる。

それにしても世論調査の結果は実施主体によってなぜ、数字が大きく異なるのだろう。最も厳しい時事通信のデータでは内閣支持率が27.4%とNHKと大きく乖離している。

自民党内では、内閣支持率と自民党支持率の合計が50%を切ると政権を維持できなくなるという経験則が語られる(青木の法則)。NHKのデータではその比率は依然70%超だが、時事通信のデータでは約51%まで低下し、危険水域に入っている。

2022年10月24日

過去記事一覧

竹中平蔵 氏

1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】

竹中平蔵(たけなか へいぞう)