日本の問題

政府債務残高削減への道

大阪経済法科大学
経済学部教授
米山秀隆 氏

日本では1990年代後半以降、現在にいたるまで、企業部門において投資が貯蓄を大幅に下回る「貯蓄超過」の状態が続いてきた。これは、日本の成長力低下に伴い、企業が有望な投資先を見いだせず、資金を持て余していたことを意味する。

企業に代わって資金の使い手になったのは政府部門である。国債を増発して民間資金を吸収し、財政支出に充ててきた。金融機関は貸し出し需要が低迷する中、運用先として国債購入を増やした。そして日本銀行は、金融機関から国債を大量購入することで金融緩和を続けてきた。

政府が企業に代わってお金を使ったことで、そうでない状態に比べ、世の中にお金が回ったと考えられる。しかしその代償として、政府債務残高(GDP比)は世界で一番高い水準となった(2022年約260%。2位はギリシャの約180%)。

これをもって、将来の大幅増税が不可避との意見がある。ただ、国債は保有主体にとっては資産であり、持ちたい主体がいる限り、借り換え可能である。また、債務削減のための性急な増税は民間が使えるお金を減らすことになり、経済に悪影響を及ぼす。債務削減は分母のGDPが成長によって少しずつ増える形で実現されたというのが、先進国で同程度の巨額の債務を抱えた国の歴史(たとえばナポレオン戦争後の1821年に約290%の債務を抱えたイギリス)が示すところでもある。

2023年5月22日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などを経て2020年9月から現職。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏