定着した「地域おこし協力隊」
地域政策研究家
荒田 英知 氏
荒田 英知 氏
地方創生に取り組む地域で「地域おこし協力隊」の存在感が増している。都市部から過疎の市町村などに住民票を移した地域おこし協力隊員にブランド化などの地域協力活動を担ってもらい、その費用を国が賄うものだ。初年度の2009年度は31自治体が89人を受け入れたが、2021年度には全国1,085市町村、6,015人に伸びた。総務省は2026年度までに1万人に増やすとしている。
以前から地域おこしの世界では、地域に変革をもたらすのは「ヨソモノ」や「ワカモノ」であると言われてきた。協力隊はそれを制度的に生み出すことが狙いだ。都市部の若者やシニア層に広がる田舎暮らし志向にもマッチする。隊員の年齢層は20歳代から30歳代が7割近くを占め、50歳代以上も1割ほどいる。
隊員の任期は1年以上3年以下で、給与を含む活動費が年480万円を上限に国から支給される。当初は担当業務や地域住民とのミスマッチもあったが、ノウハウが蓄積されて好循環に転じた。2021年度までに任期を終えた8,082人中約65%が同じ地域や近隣に定住している。
定住後の進路で多いのは就農や行政関連への就業、宿泊・飲食業の起業など。任期後も視野に入れた「逆算型支援」の広まりも隊員の定着を支えた。受け入れを機に、地域住民や自治体職員にも変化が生じ、隊員・地域・自治体が「三方よし」となることがこの制度の目指す姿である。
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1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学を卒業後、PHP研究所に入社。地域政策分野の研究員として30年以上全国をフィールドワーク。北海道大学特任教授、九州国際大学非常勤講師も務めた。